クロモジ(黒文字、Lindera umbellata)
昔から生活の中で使われてきたクロモジ
クロモジはクスノキ科の落葉低木で、春先に花が咲き冬になると黄葉します。
枝は高級楊枝として使われ、古くは豊臣秀吉の時代にお茶会の楊枝として使用されたそうです。
また江戸時代には、枝を粉砕して歯磨き粉としても使われていたそうです1)。
クロモジの特徴は、その素晴らしい香り。
クロモジの枝や葉に芳香成分が含まていて、水蒸気蒸留法で精油と芳香蒸留水を抽出することができます。
クロモジ精油や蒸留水の香りは、ウッディーな香りの中に爽やかな透明感のあるとても上品な香りがします。
この上品で爽やかな香りをもたらす主要な香り成分はリナロールです。
現在ではリナロールの化学合成法が確立され大量に製造することが可能ですが、それ以前はローズウッドから抽出されてつくられていました。
リナロールはその香りの良さから化粧品や香水の香料としてかかせないものでしたので、ローズウッドが過剰に伐採され激減してしまい、今ではワシントン条約により保護され許可なしには伐採収穫することができません。
そこでローズウッドと同様にリナロールを豊富に含むクロモジが注目されています。
しかし、そのクロモジも希少で原料を手に入れることが困難です。
しかも抽出率はとても低く、自分で蒸留してみたところ 1 kg の枝葉から精油はわずか 1ml しか採れませんでした。。
十分なクロモジの精油や蒸留水を得るには、多くのクロモジの枝や葉っぱが必要なんです。
クロモジ精油の効果効能
クロモジ精油について科学的な検証がなされ、その効果効能について様々なことがわかってきています。
リラックス効果
クロモジ精油の香りを嗅ぐと、副交感神経が優位になり β 波の割合が減少したことから、クロモジ精油の香りにはストレス解消や精神安定などのリラックス効果が期待できます4)。
抗菌作用
クロモジ精油は口腔内微生物の代表的な菌で虫歯菌や歯周病菌およびカンジダ菌に対して、抗菌活性を示しました。この抗菌活性は精油の主成分であるリナロールの寄与が大きいと考えられています5)。
現代でこそ科学的にクロモジの効果効能が解明されていますが、昔の人は経験的にクロモジの効果を感じ生活の中に取り入れていたんですね。
【参考文献】
- 薬のいらない健康な生き方 (2018)
- 日本の森から生まれたアロマ (2010)
- サイエンスの目で見るハーブウォーターの世界 (2009)
- クロモジ精油のリラックス効果 (2011)
- 齲蝕菌、歯周病菌、カンジダ菌に対するクロモジ枝葉精油およびスギ葉精油の抗菌活性 (2016)