theme「森と社長」
1号も予定通り発刊
月刊「 eso. lab」は、えそらフォレスト株式会社の社内報です。
代表である細田洋平の言葉を福岡、東京、宮崎の事務所のスタッフに届けることを目的として企画されたものです。ひとつの言葉を紡ぐという行為は、そのまわりにあるたくさんの言葉を隠蔽する作業でもあります。その言葉の重さは、捨てた言葉の陰影で決まるのかもしれません。日常的に使われている言葉の向こう側を、もっと深く聞いてみる。残していく。そんな作業を、月刊「 eso. lab」は、続けて行きたいと考えています。先月の0号に続き、順調に、予定通り、1号目発刊です。
月刊「 eso. lab」 編集 部
(下記、Kindleでも閲覧できます。)
月刊「eso.lab」編集部; 細田洋平; くらげ; 中村修治. 月刊eso.lab 第1号: 森と社長 (キャプロア出版) (Kindle の位置No.1-7). Kindle 版.
目次
1 号も予定通り発刊
目次
えそらフォレスト代表・細田洋平インタビュー
社長って?
創刊号を出してみて
ぐるぐる回りながら積もっていくもの
社長はいないほうがいいのか?
タイムスパンの長い代謝
人間は機械ではない
細田社長の「原点回帰」について
第2回インタビューを終えて。
孤独な経営者を癒す「 豊かな孤独」について
自然と共生する新しい生活文化の担い手となる 。
えそらフォレスト 代表・細田洋平 インタビュー
はじめに。
今回のテーマ は「 社長」。恥ずかしながらワタシも、社長の端くれである。だからわかる!! 社長は、会社の中で「 社長」についていちばん考えている人でもあるのだ。人のこと。お金のこと。いっぱい考えている。こんなことは、誰も考えてくれないだろうなぁ!?なんてことを考えている。 不満も、不安も、抱えている。社長なんて、いない方がいいんじゃない か!? なんてマジで考えていたりするのである。社長に、社長の在り様を聴くということは、深い森に分け入るようなものである。怖いけど聴いてみた。面白かった。
《聞き手 有限会社 ペーパー カンパニー・中村 修治》
社長 って!?
インタビュー 実施/ 2018 年 10 月 12 日 9 時〜 11 時 インタビュー 場所/ 福岡 桜 十字 病院 1 階 カフェ
創刊号を出してみて
− 無事創刊号を出すことができまして、2 回目のインタビューとなります。よろしくお願いいたします。創刊号を出版してからどのような反響がありましたか?
今回もよろしくお願いいたします。創刊号ですが、60部以上は読まれたみたいです。社員が30名ですから、それを超えて読まれているんですね。 取引先などでも「あれ、読みましたよ、面白いですね」という反響はありました。「 森と考える」とのテーマが好評です。
− それは良かったです。インタビュー記事を見て細田さんとしてはどのような感想を持たれたでしょうか?
やはり、 「これは面白いな」と。このインタビューは僕の考えみたいに書かれていますけど、このインタビュー自体がインタビューアーの中村さんと僕との間で生まれているじゃないですか。それをライターのくらげさんが書いている記事です。中村さんやくらげさんの解釈がバンバン入っています。本当に全員で作り上げたものなんですよね。僕の言葉を媒体にしてみんなで解釈しあって、それは100%僕の気持ちとは重ならないわけだけど、新しい大発見があったりします。これは様々な解釈があっていいんだと 。これは会社でも言えることですね。
ぐるぐる回りながら積もっていくもの
− 会社でも同じことが言える、とは?
たとえば、僕 が「 A」と言います。社員はもしかしたら「 A’」な解釈をするかもしれない。それを他の社員が聞いて「 B」になっちゃうかもしれないですね。
− まるで伝言ゲームのようですね。
その伝言ゲームを防ぐために、経営者は何度も何度も同じことを言い 続けなきゃならないと言われます。それはもちろん正しいと思うんですけど、きっとそれだけじゃないんですよ。チームの中で解釈がぐるぐる回って組織としての新しい概念が生まれるんじゃない かと思うんですよね。 そういうことを改めて形になったインタビュー 記事を読んで感じました。
− まるで輪廻のようにですね( 笑)空回っているようで重なっていくんですね。
そういえば、うちの息子は中学生で、学校がもう100年くらいの歴史があるんですよ。会社で言えば最近流行りのミッションみたいな建学の理想 って20文字くらい。しかし生徒はあまり覚えていない。でも、文字にはなっていなくても伝統というか「らしさ」にはこだわっているようなんです。40年くらい前に修学旅行がなくなったりしてるんですよ。 「観光旅行みたいな修学旅行に行ってもしょうがない」みたいな。
− なかなか先進の気風がある学校ですね( 笑)
そうなんですよ( 笑)それでちょっと前に生徒たちから「 修学旅行を復活させよう」という声が 上がってきて、生徒たちでプロジェクトを立ち上げてアンケートしたり、修学旅行がなくなった経緯を調べ たようです。ところが、やっぱり修学旅行って 要らないんじゃないか? やるとしたらどういうものだっ たらいい のか?という思索を繰り返し自分達の代では結論を出せない、ということになったようです。後輩に「あとは皆さんが引き継いでください、考えてください」ってことになったみたいです。
− 結論としては変わりがないんだけど、積み上がった?
これ、先生が「 やれ」って言っ てるんじゃないんですよ、先生は「生徒みんながやるならサポートするよ」と寄り添うというかね。おもしろい学校だなと思いました。伝統とかカルチャーの歴史ってこう作られていくんだろうなぁ、って学びましたね。上から「 やりなさい」って押し付けるんじゃなくて、時間はかかるけどみんなでワイワイガヤガヤやって体験を共有していくことで、目に見えない「らしさ」というものが積み重なっていく。会社も同じなんじゃないかと思いましたね。学費はとても高いけど親父も学んだ(笑)一方そういうことは入社してからでないと体験はできないので、入社前にそれを感じられるような言語化は必要ですね。この eso. labがそうなればいいと思います。
社長はいないほうがいいのか?
− 社長としてそこから学ぶことはありますか 。
僕は社長として大したことしてないし会議で文句言って邪魔ばかりしているし(笑)。社員が会議でワイワイガヤガヤ自由に議論してなにかが 出来上がっていくのが、さっきの概念が循環して組織として固まっていくってことなのかな。だから最近は邪魔にならないように会議ではひっそりしてるの。えそら、社長がいないほうがいいんじゃないかな。
− 大変ロックな発言をありがとうございます。でも、組織として会社というものに社長はいないと駄目なんじゃないですか? 今回のテーマって「 森と社長」ですし(笑)
お題を中村さんから聞いてから改めて考えたんですよ。森ってなんだろう、社長ってなんだろうって。そうしたら「秩序」という言葉が思い浮かびました。社長って秩序の番人みたいなものなのかなって。
− 細田さんのいう秩序とは「分けること」なんでしょうか?
えそらの社長としてはそうですね。森のなかで受け入れられるものとそうでないものを分けるというかね。何でもかんでも受け入れていたら森って壊れちゃいますから。もちろん、よく見えて悪いものとか悪く見えていい物とかがあるのでそこが難しいわけなんですけど。ただ、例えば森のブルドーザーが入ってこようとしますね。これは明らかに森を破壊するのが目的でしょう。森とユーザーの中で絶えず相互作用しながら変化していく、というのでなくて機械的に一方的になぎ倒していく。これは違う、全力で止めないといけない。変化はOKだけど破壊はNGみたいなね、そういうのやめてねって。それくらいでしょうか、社長が引き受けるべきなのは。だから、森のゲートにいる番人かなと。ちょっとおとぎ話風に言えば(笑)でも、分けること自体が本当はよくないんですよね。すべてがあるがままに受け入れるのが 理想なんですけど。 森的でも有りたいし、社長として会社を守るために「分ける」という作業をしなくてはいけない。そこでぐるぐるするんですよね。答えが出ない・・・。組織ができるとどうしてもお金や権力の流れができてきて、それは絶対に必要になってくるんですよね。もっと自然に組織運営をできないかな、と思うんだけど、これは急激に変えていくことはできないんですね。このeso. labも将来への申し送りかもしれません。
− 申し送りとはさっきの学校のように?
人間って津波があって、ここより下には行っちゃいけないよって神社を作っても三世代経つと降りちゃう。大恐慌も 100 年に 1 回くらいあって。 人間の痛みの記憶って100 年も続かないんじゃ ない かな。だから、今の問題意識をね、未来に伝えるってメディアの役割なんですよ。 繰り返し繰り返し人間って愚かな 間違いをするんですけど、 口伝から文字、音声、映像と変わってきたメディアによって 情報を重ねることで少しでも変わっ ていくんじゃないかなって。この本もその役割を将来の会社への申し送りなのかも。
タイムスパンの長い代謝
− なるほど、すごいタイムスパンでのお話になってきましたね(笑)
長いタイムス パンでの変化というと、宮崎の森って照葉樹(常緑広葉樹)林なんです。常に葉っぱが開いてるから地表に光が入らない。だから森として新陳代謝はすごく遅いんです。研究者によると世代の更新が起きにくい照葉樹林は衰退するはずなんですけど、今こうして残っている。なんでかというと、九州って台風の通り道じゃないですか。強風とかで木がなぎ倒され て、大木であればあるほど倒された時にグワーって光が入るんです。そうすると光が入ったところで発芽して新しい木が育つと。 1本あたりは数百年の寿命なのですごく長いスパンでゆっくりなんですが、それで何万年と森が続いているわけですね。まさに持続可能なスピードでやってるわけです。
− 森は人間より記憶力が長いかもしれませんね。台風といえば今年は台風の当たり年でしたが、宮崎の事務所は大丈夫でしたか?
事務所そのものは大丈夫だったんですけど、事務所周りの木が何本も折れたんですよ。竜巻みたいなのがゴーってきたようなんです。でも、一帯 全部がやられるんではなくて、スポット的に倒れたり枝が折れたりしてるんです。さっきの話しを思い出しました。ビニルハウスとかやられた方 には申し訳ないけど、森の一部を破壊する嵐によって森が更新されているって、嵐は森の外部なのに一部でもあるんじゃないかと。
− 森がまるで自分を最適化するように壊れるのですね。
台風が来ると森が大きなダメージをうけるわけですよ。でもね、それが新しい世代を作っているのがある。自然の回復ってダメージから発生する のかなってこと ありました。よく千葉 沖でヒラメ釣りに行ってたんですよ。ヒラメ釣りって 1日で1〜 2枚取れたら良い方。でも、震災があってしばらく船が出せなくて、久々に釣りに行ったらこんなに釣れて良いのかってくらいに釣れました。自然の回復力ってすごいじゃんと。人間に大きなダメージを与えたことで、自然の生態系はダメージから回復できているんだなと。
− それだけ人間が自然を破壊しているということでもありますね。
そうなんですよね。破壊と創造は紙一重だし、パラドックスでもある、なんだか禅問答のようなことが人を一部とする大きな森では起きているなと感じるのです。だからさっきの[社長]という森の一部は[森]のなかでどう振る舞うのがよいのか、ぐるぐるまわっちゃうのよね。持続可能性を活かしながら人間がどう発展していけば良いのかな、とかね。
人間は機械ではない
− 社長としてどう「 秩序を作るか」ということでもありますね。
まぁ、改めて理想の社長の 話をすると、 「俺の話を聞け」というのではないわけ。もちろん、そういう社長を否定するわけじゃないんだけど、 自分のやりたいことだけを部下にやらせるっていうのは違うと思う。それなら一人でいいじゃないですか。それが確実なんだし。人間は機械じゃないからどうしても違いが出てきます。
− AI が発達したらいいかもしれませんけどね。
社長ってこう西洋 的発想と言うか、理論とか戦略とかまぁ色々ありますけど、人間全部がコントロールできるってのが前提にある考えをする人もまだまだ多いんじゃないかな。でも、人間 って見えているものが一人ひとり違う。ともすればそれを忘れて機械的に働くことだけを求めたくなります。誰でも良いっていうね。でも、AがA’になったりBになったりしても良いんだと思うんですよ。そういう自分では目に見えない解釈っていう のが生まれる余地がある企業にしたいですね。
細田社長の「 原点回帰」について
− 聞くところによると細田さんは以前は完璧な社員を求める社長だったそうですが変わりました?
どこで聞いたんですか!?でもまあそうかもしれない(笑)ただ「今日できるベスト」は今でも求めますよ!
− どこで 聞いたかは内緒です(笑)
でも 以前とは本当に経営者としての考えが変わったように思います。実家の生業はクズ 拾いで 貧乏だったんですね。小学生のころ仕事を手伝って いたんですが、12月25日にはケーキ、大晦日の夜にはかまぼこなど、まだまだ食べられるものが大量に捨てられていて、こんな格差があるのか、 と小学生ながら思いましたね。内緒ですけど、それ持って帰っておやつにしてた。でね、こんな社会はおかしいと。でも、大人になり社会の中に入っていくと、そんなぼくも世間の空気に流され、効率重視、成果重視に目がいっていました。
− それがどうして「原点回帰」に向かうようになったんでしょうか?
原点回帰する中で大きかったのは、子供を持ったことがあります。子供って本当に言うことを聞かないし思い通りにもならない。その中で学んだ こともあります。でも、それだけでなくて 前職での苦い経験などが多面的に重なっているからだと自分では考えています。
− 前職での苦い経験とは何でしょうか?
前職では世間的な平均の収入の数倍はありましたが、持ち株会社の役員はさらにその数倍の収入を取っていました。その一方で、子育てする女性 社員のひとりは「給料のほとんどは保育費で消えてしまう。なんのために働くのか」と言っ て泣きながら辞めていきました。体調が思わしくなく 休職を余儀なくされ、病院にかかるお金が必要なのに収入が減ってしまう社員もいました。これって搾取じゃないかって、すごく後ろめたい気持ちだったし、これをなんとかしたいなって思っていました。
− 子供の頃に貧乏で苦労した思いが蘇った?
そうですね。子供の頃、誕生会に呼んでもらってもお金がないからプレゼントを買えないんです。自分でなにか作って持っていく。でも見向きもされない。とても悲しい経験ですよ。それを思い出したとき、見向きもされない人のことを大事にしたい。やっぱり自分はそういう会社を作りたいと思いました。
− 三方よし、バランス、そういったものが大事だと?
もちろん、それはあるんですよ。でも考えてみると「人間だけでいいのか?」という問いがでてきました。結局、人間は自然からの恵みによって 生きていて、でもそれが行き過ぎると搾取になりますよね。他の生き物や、将来の人間からの搾取。生き続ける森には時間的、空間的なバランス、 つまり秩序があって、古代の人は神と呼んだり、科学者は物理学、量子力学と呼んでいる。
− それが細田さんのいう「 秩序」となるわけですね。
では社会における秩序とは 何かを考えたとき、森という概念を軸にして行動していきたいというのが ホソダの考えです。正しいかどうかはわかりませんし、そもそも正誤、善悪という二元論が当てはまらないのかもしれません。ただ、森の外に対しては「 そういうわかりにくいことをやりたい人いたらこの森で一緒にやろう!広がるか消えるかわからないけど、やってみようよ」と、そんなお誘いを、森の中においては一員でありたい。できれば「いなくても困らないし、い ても邪魔にならない」 存在でいたいな、と。
− すべての思いが「 森と社長」という思いに集約されるのですね。とても熱い思いを感じました。さて、本日もお時間です。次回はまた別なテーマで 伺いたいと思います。
どんなテーマが来るかヒヤヒヤですが、お 手柔らかに。
− どんどん細田さんの本質を引き出すテーマを作っていきたいと思います。では、お疲れ様でした!
お疲れ様でした!
第 2 回 インタビュー を終えて。
草も花も何もないところに森をつくるには!? まず、大きな岩を置くのだそうだ。大きな岩を置くと、熱くなった岩が夜の空気に冷やされて水滴が 発生する。そこに微生物が生まれ、そのうちに植物が芽を出す。虫もやってくる。社長って、そんな「岩」みたいな存在かなぁ!? と思っていた が・・・どうやらそんな 大きくて、 硬いものでもないようである。言ってみれば「まなざし」みたいなものなのかもなぁ!? 次号のテーマは、 何 にしようか!? ぐるぐると巡っている。。。!
話し手 細田洋平(ほそだ・ようへい) プロフィール
宮崎県出身。 電気通信大を1989年 卒。大手監査法人での上場支援やシステム開発・コンサルティングに従事した後、 大手化粧品通販会社の社長を経て、 2010年当社設立。 現在は、天然原料をつかったオーガニックコスメの自社ブランド「 HANA organic」をECや店舗で販売する BtoC 事業 と、 メーカー向けにコンサルティング、フルフィルメントなど通販支援事業を手がける BtoB事業を展開する。
「細田ボロ平」 という男についての解説
はじめて会ったのは、もう15年ほど前になる。大手監査法人から切れ者が来ると聞いていた。デブというよりは、ゴッツイ30中盤の 男。その両手 には、ドーナツ 100 個がぶら下がっ ていた。近所のミスター ドーナツのドーナツを買い占め てきたと言った。なかなかの戦略家である。愛嬌もある。でも、でも、しゃべることは 難しかった。みんなが難解だと頭を抱えていた。(笑)細田洋平の話で好きなのは、宮崎の幼少時代の貧乏だっ た話。 洋平ではなく「ボロ平」と呼ばれていたことを嬉々として話す。体格の小さいボロ平が 「柔道」を手に入れて成り上がっていくところが 好き。お互いに、もう50歳を超えた。あの難しい話も、少しわかりやすくなってきた。老婆心ながら、もっとわかりやすくした方がいいのに!? と思う。
聞き手 中村修治( なかむら・しゅうじ) プロフィール
キナックスホールディングスとペーパーカンパニーの代表。1986年、立命館大卒。 94年、 福岡で独立。戦略プランナーとして多様な企業の広報 活動のブレーンとして活動。ネット上でコラムを書くと数万のアクセスを荒稼ぎ。自身のフェイスブックのフォロワー数は、約 10000 人。現在 は、コラムニストとしての知名度も高い。